orm
『Study of our land』


本作は、公私ともにパートナーである美術作家 藤井智也・高橋ちかやによるアーティストユニット、orm( オーム ) によるインスタレーション作品である。
生活する上で身近にある事象を拾い上げ、個人と他者の衝突によるしがらみ、相互作用により見えてくる境界や領域などの、 社会におけるアイデンティティの問題に焦点を当てる。






『Study of Our Land_Play』2024年
ミクストメディア サイズ可変

ステートメント: 
本作は、自身の子どもが ASD(自閉スペクトラム症)であったことから、 その理解の難しさ、他者との関係を扱う作品である。ASD は、コミュニケー ションの困難さや空間・人・特定の行動に対する強いこだわりがある発達 障害で、症状の一つとして同じ行為を繰り返すことがある。これらの行動 は脳の機能の特性によるものであるが、他者からは一見性格による特異な 行動に見えるため理解が得られないことが多い。 本作では子どもが一人で行うこれらの繰り返し行為 ( 遊び ) を親(大人)で ある二人が模倣し演じる。それら同じ行為の繰り返しの中に個の特性やズ レのようなものが生じ、他者との対立や衝突といった敵対性が暗喩的に表 出する。相互作用により立ち上がる交差する境界やその領域の曖昧さは、 この社会において個としてのアイデンティティを持つことの難しさ、民族、 領土、国家といった集団的アイデンティティの問題へと拡張されていく。

インスタレーションの具体的な構造:
模倣し演じた行為は 4 つの映像作品で展開される(映像は 50 インチのサ イネージで再生。サイネージは単管パイプに設置予定※写真参照)。それら の映像に囲まれたエリアの床は赤褐色で塗られており、その中心には背を 合わせた状態の椅子が二脚置かれている。赤褐色は先史時代の洞窟壁画に も使われた人類最古の顔料である。洞窟は別の世界につながる場所として 考えられており、そこでは宗教的集会、歌や踊りなどのパフォーマンスも 行われていたという。 鑑賞者は映像に囲まれた洞窟に見立てた赤い領域に足を踏み入れることで、 アイデンティティについて思考を巡らす。



※写真は自身の制作スタジオで撮影。
展覧会時は、赤褐色で塗られた薄いカーペット を敷く予定。

作品映像 https://vimeo.com/1029237198/ea8ac637fc?share=copy



『Study of Our Land_Stars』

2024年 LEDライト, パラフィンワックス W400*H650mm

ステートメント :
星座は、各時代や文化圏において多様に制定されてきた歴史がある。例えば 私たちが知る現在 88 個の星座とは違い、古代中国では 1 星や 2 星といった 少数の星によって構成された星座も多くあった。人類は手の届かない普遍的 な存在である無数の星に対し特定の " 見立て " を行い意味付けをしてきた。
本作では、ロウでできた姿が映らない鏡の中に、架空の星を存在させ、人間 の曖昧さや捉えにくさという内面をうつしだすものとして扱う。私たちは鏡 像という他者の視点をもつことで,自己と他者を対象化し自己を認識し始め るが、今作では自身が映らない鏡面を大きな宇宙 ( 内面 ) と見立てるのである。 鑑賞者がそれらの星を見ながら、思い思いに星座を作ることができるワーク シートを設置する。 人間が行う自身または他者へのカテコライズ化に対し、多様な見方を許容す るもう 1 つの鏡の存在について思考させる試みである。


インスタレーションの具体的な構造 :
パラフィンワックスと LED ライトでできた作品 5 点を壁に設置する。 room_B の中心に低めの展示台を据え、その上にワークシート(子どもの学 習プリントを模したもの)をバインダーに挟んだもの、および美術鑑賞用と して使用されている低倍率の小型単眼鏡 ( 望遠鏡 ) を置く。鑑賞者は直接もしくは小型単眼鏡で作品を鑑賞しながら、バインダー(手元が見えるようライトを設置)を持ち、 自身の想像する星座を描くことができる。




『Study of Our Land_Dance』

2024年 シングルチャンネルヴィデオ, 3分55秒(ループ), サイズ可変